2020年の東京五輪に向け、LGBTの拠点となる『プライドハウス東京』の設立が発表。9月6日に記者会見が行われた。
「プライドハウス」とは、LGBTの観客や選手の交流の場として、また国内のLGBT情報の発信拠点や憩いの場として、2010年バンクーバー五輪で初めて設立。以降、2014年のソチ五輪を除いた(ロシアで反LGBT法案があったため)すべての大会で設置されてきた。
この流れを引き継ぎ、東京五輪でも東京版「プライドハウス」を設立する。
代表の松中権氏は、「これまでの世界のプライドハウスは1つの団体が運営してきたが、今回の東京は28の団体・個人・企業が連携するコンソーシアム(組合)として運営していきます」と語る。
参加団体には、認定NPO法人の「グッド・エイジング・エールズ」、プライドを運営する「東京レインボープライド」、LGBT映画祭を主催する「レインボーリール東京」、HIV啓発支援を行う「akta」、「ぷれいす東京」、職場のLGBT問題を解決する「虹色ダイバーシティ」ら、日本を代表するLGBT団体だ。
それぞれの団体が培ってきた知見やノウハウを集結してプライドハウスの運営に取り組むそう。
プライドハウスのロゴ制作を行ったのは、東京五輪のエンブレムを手がけたアーティストの野老朝雄氏。
LGBTを象徴する6色のレインボーを用い、また同じ面積で配置されていることから多様性や平等の意味を込めたそう。
プライドハウスは、東京五輪までの期間(2018年9月~2020年7月)、大会の期間中(45日間)と大会開催以降の3つのフェーズで運営される。
通常オリンピックが終了するとプライドハウス自体を締めることが多いのだが、松中氏いわく「世界の主要都市には『LGBTセンター』なる情報発信の場があるが日本にはない」とし、国内のLGBTの拠点として、大会後も場所を変えて残していくそうだ。
プライドハウスの設置場所は未定だが、都心でアクセスの良い場所に設置を考えており、外国人観光客、LGBT、選手たちの交流の場を想定している。
また、NPO団体だけでなく、自治体や企業とも連携をはかる予定。
プライドハウスのアンバサダーとして、現役のアライ・アスリート(LGBTフレンドリーなアスリート)4名が参加している。
会見に参加した元日本女子サッカー代表の大滝麻未選手はこう話す。
「海外でレズビアンの選手との出会いがきっかけでした。彼女がカミングアウトできるようになるまで、どれだけ時間がかかったのだろうと。またできない人も世の中には沢山いるのだと」
「人は無意識にある常識で相手をジャッジしており、みんなに同じことを求めがちです。しかしスポーツの世界では違います。スポーツは違いや個性が原動力になるのです。私はアスリートであることを生かして、他のアスリートとも連携を図りながら、スポーツの力で世界をもっとよくしていきたい」と語った。
また、元フェンシング日本女子代表で、トランスジェンダー男性であり、現在は「東京レインボープライド」共同代表を務めている杉山文野氏は「選手時代はなかなかカミングアウトできなかった。それは、スポーツ業界でやっていけるかなという不安、ファンを裏切らないのかなど。現役の選手がカミングアウトしづらいのなら、アライ・アスリートが増えることにより『LGBTもウェルカムだよ』という雰囲気作りが、いまのスポーツ界に重要だと考えます」と語っている。
オリンピックではさまざまなドラマが生まれると同時に、LGBTにまつわるニュースも多い。
たとえば、前回のリオ五輪では、男子競歩のトム・ボスワース選手のプロポーズや、女子柔道金メダリストのラファエラ・シルバ選手がカミングアウトしたり、アメリカ初のトランス男性が男子代表として選出されるなど、多くのニュースがあった。
また、リオ五輪でカミングアウトした選手は過去最多の50人を超えたことから、海外ゲイメディアGayStarNewsでは「東京五輪ではカミングアウト選手が100人を超えるのでは」と予想している。
オリンピックは、東京が世界に誇れるLGBTフレンドリー都市としてアピールできる最大のチャンス。
「プライドハウス」の設置時期、場所ともに未定だが、今度の活動に注目したい。