AIによる画像生成が話題となって久しい昨今。台湾でも、AIによる画像生成が注目を集める出来事がありました。
きっかけとなったのは、SNSに投稿された、タピオカミルク片手に微笑んでいる黒縁メガネ男子の生成画像。
AIで描かれたとは思えないほど、ピンポイントで台湾を再現した1枚が大きな話題を呼び、現地の大手メディアもニュースとして取り上げるほどの一大ブームが巻き起こりました。
実は、この1枚を生み出したのは、とある日本人男性。ブームの裏側で、彼は一体どんなことを感じていたのか?
インスタアカウント『台湾AI男子』にて作品を発表している、話題の1枚の作者・りゃんさんにお話を伺いました。
りゃんさんが台湾で暮らしたのは、2016年〜2023年までの約7年間。台湾中部の街・台中での起業をきっかけに、現地での生活をスタートしました。
「当時付き合っていた台湾人の彼氏と、お店を開く計画を立てていたんです。日本茶とお茶菓子をカジュアルに楽しめる、カフェのようなお店でした。起業ビザも取得し、2016年の4月に台中で開業。台中のみなさんにも、新鮮に受け入れてもらえたように思います。」
「予想外だったのは、開業準備中に決まった彼氏の海外移住。遠距離での交際も試みましたが、最終的には別々の道を歩むことになり、お店も1人で切り盛りすることになりました。」
「ただ、開業から3年が経った頃、お店の業績が伸び悩み、起業ビザの更新条件を満たすことができなくなってしまいました。営業を続けていくこともできず、やむなく閉店することに。」
「台中では、外国人としての職探しも難しかったため、台北へと移ることになりました。台北では、現地採用の会社員として新生活をスタート。3年半ほど暮らしたので、台湾には合計して7年ほど住んだことになります。」
お店のオーナーや現地採用会社員として働く傍らで、個人での活動も展開していたりゃんさん。
商品撮影やPodcast、ブログなど、様々な分野で挑戦を続けてきたそうです。
「カメラはお店をやっていた頃に、お茶の商品撮影をするために始めました。後に、台湾の風景や台湾男子たちも撮影するようになり、お仕事としてレストランのメニュー用写真を撮らせていただいたこともあります。ブログやPodcastは、顔を出さずにできるのが自分に合っていると思って、発信を続けていました。」
「外国人として生きていくには、様々な制限があり、どうしてもチャンスは限られます。だからこそ、自ら行動を起こさないと何も変わらないんだということを、身をもって学びました。」
「現在は、再び日本での生活を始めましたが、様々なことに挑戦する勇気が持てたのも、外国人として生きた経験があったゆえかもしれません。」
日本へ帰国後、りゃんさんが新たに始めたのが、AIを活用した作品制作。
AIとの出会いは、台北で会社員として働いていた頃に遡ります。
「台北では、AIのチャットボットを扱う会社で、営業として働いていました。仕事を進める中で、機械学習について勉強をする機会があり、その間に世の中でも、どんどんAIという言葉が聞かれるようになりました。新しいテクノロジーに触れるのは好きだったので、徐々に個人でもAIを活用するようになりました。」
「一番最初は、ブログに使用するイメージ画像をChatGPTで生成し始めたのがきっかけです。その後、どのAIが自分に合っているのか、実際に触りながら試行錯誤していました。」
「もともとカメラで静止画に触れていた分、画像の扱いには馴染みがありますし、プロンプトを入力するだけですぐに作れる点に、魅力を感じていました。」
AIでの画像生成で描けるものは、多種多様。
その中からなぜ、台湾男子というテーマに絞った『台湾AI男子』が誕生したのでしょうか?
「最初は本当に、ただの遊びだったんです。日本に帰ってきてから、台湾への恋しさを満たしてくれるものを作ってみたくなって。台湾っぽい男子をAIで描いてみたらどうなるだろうという、小さな好奇心ですね。」
「そこで初めて生成してみたのが、タピオカミルクを持った黒縁メガネ男子の、あの画像。軽い気持ちでX(旧Twitter)に投稿してみたら、最初に台湾のゲイコミュニティで話題になり、そこから一気に広まったようです。」
「インスタに専用のアカウントを作って、そちらにAIで生成した台湾男子たちを上げるようにしたのが、『台湾AI男子』の始まり。台湾の様々なメディアからもDMでお問い合わせが届き、そこから現地でニュースになりました。」
「すでに台湾を離れていたので、現地でバズっているという実感はあまり湧きませんでしたが、一気に1,000人以上フォロワーが増えるなど、画面越しに反響が見えた感じでしょうか。」
台湾で一大ブームを巻き起こした大きな理由は、アジアでも中華圏でもなく、よりピンポイントに”台湾”の男子であったこと。
この再現度の高さは、どのように実現しているのでしょうか?
「リアルな台湾っぽさを大事にしているのは、他のAI作品のアカウントとの違いかもしれません。7年間の台湾生活があったからこそ、その記憶を掘り起こして、あの時見たかもしれない人やシチュエーションを想像しながら、プロンプトに落とし込めています。」
「生成する際に心がけているのは、”イケメン”という言葉を使わないこと。何をもってイケメンとするかは、人によって基準が違いますから。」
「自分が好きなタイプの男子を言葉にしてみたら、台湾の街角で見かけるような男子になった、という感じでしょうか。“家豪”とか“冠宇”とか。 ”この顔だったら、こういう名前に違いない!”みたいなバズり方を現地ではしていて、すごくおもしろいなあと思います。」
「どこにでもいそうな男子の画像って、調べても意外と出てきませんし、いきなり写真を撮らせてほしいとも切り出しづらいもの。だからこそ、AIで作る価値があるのでは、と思いますね。」
AIを活用した作品の発表を現在も続けている、りゃんさん。
最後に、AIと密に触れ合う中で感じていることや、今後の期待について伺いました。
「AIって、まだまだ特殊な仕事の人が使うもの、というイメージがあるように思います。AIで生成された画像を”気持ち悪い”と感じて、敬遠してしまう方もおられるかもしれません。」
「でもまずは、距離を置く前に一度、自分で触れてみてほしいなって。100%頼り切るのはもちろん良くないかもしれませんが、挑戦をサポートしてくれるツールやパートナーとして、付き合っていくのもアリじゃないでしょうか。」
「最近のAIは翻訳能力に加えて、文章から細かい感情のニュアンスを読み取ることもできるようになってきています。世界中の人々と交流をしたり、いろんな国の情報にアクセスしたりすることのハードルが、これからもっと低くなるかもしれません。」
「例えば、それを出会いのアプリに活用すれば、言語や国の壁を超えて、恋愛も今よりもっと可能性に富んだものになりそうですよね。」
「あと興味深いのは、”同性愛”のような言葉を入れると、ステージパフォーマンス用の濃厚な化粧をしたカップルなど、逆に偏りすぎた画像が生成されたりすることでしょうか。」
「学習素材がまだまだ少ないことも原因かもしれませんが、敢えて入れない方が自然な表現だったり。もしかするとAI視点では、同性・異性関係なく人であって、何ら変わらないという表れなのかもしれませんね。」
「『台湾AI男子』での作品発表を通して、もっと世界に台湾男子の魅力を伝えられるといいなと思います。これからは、見る人がより感情移入できるような、ストーリー性を感じられる作品にも挑戦したいです。」
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AIによる画像生成で、台湾に一大ブームを巻き起こした日本人男性・りゃんさんにお話を伺いました。
『台湾AI男子』では、現在も続々とリアリティあふれる作品が登場中。台湾男子の魅力に触れたい方はぜひ、インスタからフォローしてみては?