日本では、薬物を使用すると重い刑罰をうける。
しかし松本氏によると、世界の国々では「薬物の非犯罪化」が進んでいるそうだ。
その背景には、薬物依存者たちは犯罪者ではなく、依存から抜けたくても抜けられない「心の病気」だという認識がある。
2001年、ポルトガルにて、試験的に「薬物の非犯罪化」を行ったそうだ。
薬物を使用していると逮捕はされるものの、刑罰を与えずに、ソーシャルワーカーによる更生プログラムに参加させるというもの。
10年後の2011年、その効果を検証したところ、HIVの新規感染者が激減し、特に10代など若い薬物使用者が減少したのだ!
このこともあり、現在WHOでは「薬物の非犯罪化」を各国に促しており、日本もその勧告を受けているそう。
松本氏によれば、薬物の再発を防ぐには「罰ではなくご褒美」だと話す。
「薬物の再発防止には治療関係を続けることが重要ですが、薬物など中毒に陥ってしまう人は、これまでの人生で成功体験が少なく、あらゆることで怒られてきた人たちです。そんな彼らに怒ったり罰を加えても、根本的な解決にならないのです」
そこで、松本氏が開発した薬物再発防止プログラム「SMARPP(スマープ)」では、治療期間中に薬物を使用しても報告したり罰を加えるのではなく、とにかく「褒めて」、ゆっくりと時間をかけ薬物を辞められる取り組みを行っている。
また施設内でコミュニティを作り、スタッフもフレンドリーに対応し、通院したくなる雰囲気・環境作りに励んでいるそうだ。
中毒は英語で「ADDICTION(中毒)」だが、その対義語は「CONNECTION(つながり)」だと、松本氏は語る。
「中毒は孤独な人が多く、心の病によるものです。ですので、地域の中で彼らを孤立させず、安心してクスリについて話し合える環境が必要です」と語った。
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松本氏の話す「依存の原因=孤立」は、薬物にかかわらず、あらゆる問題に通じることだろう。
ゲイの世界では、セックス依存症、恋愛依存症などあらゆる依存症、また孤独死など、依存や孤独による様々な問題がある。
もし自分が何かに依存しているのであれば、①信頼できる友達を増やすこと、②何かしらコミュニティ(できれば多く)に関わることだ。
そしてもし、知り合いや友達が何かに依存しているのであれば、①親身に相談に乗ってあげること、②困った時に助けてあげることだ。
ゲイコミュニティ全体として、「孤立させないこと」がとても重要な課題なのではないだろうか。