GENXYエディターの上地です。
昨年は映画『ムーンライト』がアカデミー賞の最高峰・作品賞を受賞したように、LGBT映画が豊作の年でした。
さて今年はどうかというと、2018年も上半期に話題作が目白押しです。そこで、現時点で発表されている上半期のLGBT映画6本を、一部レビューも含めて紹介していきます。
南米・チリ発のトランスジェンダー女性を描いた映画『ナチュラル・ウーマン』。
舞台はチリ・サンディエゴ。ウエイトレスをしながらナイトクラブで歌うトランス女性のマリーナは、年の離れたオルランドと暮らしていたが、突如彼が亡くなったことにより彼女に様々なトラブルが襲うのだった――。
美しきヒロインを演じるのは、自身もトランス女性で歌手のダニエラ・ヴェガ。先日アカデミー賞の「外国語映画部門」チリ代表に選ばれたこともあり、ヴェガは最もオスカーに近いトランス女優と期待されています。もしトランス女性がオスカーを獲得すれば史上初の快挙です。
また同作は、まだまだLGBTへの偏見・差別、特にトランスジェンダーへのヘイトクライム(憎悪犯罪)が絶えない南米発の映画ということも意義深いです。
『ナチュラル・ウーマン』は、2018年2月より、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテほか全国ロードショー。
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女性から男性へと性別適合手術を望む16歳の主人公レイと、その家族を描いたヒューマンドラマ『アバウト・レイ 16歳の決断』。
主役のエル・ファニングほか、母親マギー役にナオミ・ワッツ、おばあちゃんのドリー役にスーザン・サランドンらキャストが連ねています。
試写を観ましたが、とにもかくにも素晴らしい出来映えでした。
メインキャラクターの3人は、それぞれ別の境遇や悩みを抱えています。
主人公レイは男性になりたいと切に願う思春期真っ只中の16歳。レイの母マギーは過去に何かしらのトラウマを抱えるシングルマザー。レイのおばあちゃんにあたるドリーは、レズビアンで長年同棲しているパートナーがいます。
面白いのは、物語序盤でレズビアンのドリーが「レイは女の子が好きってことはレズビアンでしょ?(手術するなんて)理解できないわ」と、トランス男性であるレイへの無理解を表すシーン。
これは同じセクシャルマイノリティであれ、他のジェンダーやセクシャリティへの理解が乏しいことを表現しています。
また英語の原題「3 Generations(3世代)」のタイトル通り、3世代がレイヤーのように重なって一つの物語を作っており、非常にまとまりのある映画に仕上がっています。
『アバウト・レイ 16歳の決断』は、2月3日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー。
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世界的ゲイ・エロティック・アーティストのトム・オブ・フィンランドの伝記映画『トム・オブ・フィンランド』が、2月10日に開催される「トーキョー ノーザンライツ フェスティバル2018」にて3日間限定上映されます。
ゲイアートの元祖とされるトム・オブ・フィンランドは、当時は弱々しいイメージだったゲイたちを筋骨隆々に描き、力強い男性像を構築。
今日の世界のゲイカルチャーに多大な影響を与えてきました。
初の伝記映画となった本作は、フィンランドの著名映画監督ドメ・カルコスキ氏がメガホンを取っており、アカデミー賞のフィンランド代表作品にも選出されています。
非常にゲイライクな映画とあって、日本公開はないかと思われていた本作ですが、映画祭での限定上映とあって見逃し注意です。
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1990年代初頭のゲイコミュニティを襲った「エイズ危機」を描いた映画『BPM ビート・パー・ミニット』。
今でこそ語られることが少なくなりましたが、当時HIV/エイズは「ゲイのガン、死の病」として恐れられており、それまで以上にゲイたちは不当な差別を受けていました。本作はそれらに抗議し変革を目指した実在の団体「ACT UP Paris」の活動を描いています。
作品を拝見しましたが、実話ベースの映画とあって、細部に至るまでとてもリアリティがあります。
HIV/エイズ問題やLGBT権利運動は、そのような活動に参加していない人からすると、少し取っつきにくい印象を受けますよね。
しかしながら本作では、アクティビズムに関わるACT UPのメンバーたちの生活、セックスや恋愛と並列にHIV問題やLGBT権利が描かれており、非常に感情移入しやすい映画です。
タイトル「BPM(心拍数や音楽のテンポを表す)」になぞらえて、劇中には頻繁にダンスシーンが登場。彼らの喜びや悲しみを音楽(鼓動)で表現しており、エモーショナルな演出は見事です。
本作はカンヌ国際映画祭にてグランプリを獲得したほか、その他独立賞を含む4冠に輝いています。
『BPM ビート・パー・ミニット』は、3月24日より劇場公開。
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ブラジル発のゲイ映画『彼の見つめる先に』が、3月10日より日本公開されます。
物語は、ブラジル・サンパウロ。
目の見えない高校生レオは、ファーストキスと留学することが夢。ある時同じクラスに転向してきた少年ガブリエルと親しくなり、今まで経験したことのない感情の変化に気づくのだった――。
本作はブラジル人監督ダニエル・ヒベイロ自身が手がけた2010年の短編映画を、同じキャストで長編映画化したもの。
見事、ベルリン国際映画祭にて、「国際批評家連盟賞」とLGBT映画賞「テディ賞」を受賞しています。
盲目の少年と親友の甘酸っぱい青春ラブストーリーは、予告編を観ただけでキュン死寸前です…!!
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現在、世界の賞レースを席巻しているゲイ映画『君の名前で僕を呼んで』が、4月より日本公開されます。
2017年の『ムーンライト』に続き、2年連続でゲイテーマの作品がオスカーを獲るのでは?と期待されている注目作です。
本作はオープンリーゲイのルカ・グァダニーノ氏がメガホンを取った作品。北イタリアの避暑地を舞台に、17歳のエリオと24歳のオリヴァーが惹かれ合う様子を描いたラブロマンス。
イケメン俳優アーミー・ハマーが演じる大学院生と、あどけなさが残るティモシー・シャラメが演じる17歳の少年、太陽が燦々と降り注ぐイタリアの田舎町で、夏のひとときを楽しむアバンチュール―――ゲイからBL好きまでを虜にすること間違いなしの設定ですよね。
『君の名前で僕を呼んで』は4月より劇場公開。(詳しい日程は未定)
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