HIVと共に生きることは、医療の面において随分と難しくなくなった。しかし、HIVのスティグマは未だに根深い。
ある調査によると、HIVのスティグマはHIV当事者の精神面に悪影響を及ぼすだけでなく、HIV陽性である可能性を恐れた人々がHIV検査を避け、結果としてHIV感染が拡大してしまうという負のスパイラルを生み出しているという。
性の健康に取り組む慈善団体であるGMFAは、HIV当事者が直面するスティグマを取り除くため”Living With HIV(HIVと共に生きる)”という新しいキャンペーンを打ち出し、様々なバックグラウンドを持ったHIV当事者が「HIVが人生にどのような影響を与えたか」について語ったインタビュー動画を公開した。
多様なバックグラウンドにも関わらず、当事者は動画において「HIVは僕の人生に全く悪影響を及ぼさなかった」など「HIVが人生や恋愛を楽しむ上で障害にならなかった」ことを語った。
また彼らは、HIVが生きる上で障害にならなかったことだけでなく「HIVと31年間共に生きている」「HIVは誰が僕の友達で、誰が僕の人生にとって大切かを教えてくれた」「HIV感染後も僕は僕のままだし、行動も今までと変わらない」とHIVと共に生きることを前向きに語っている。
ある男性は動画でHIVのスティグマに対処する方法について「HIVについて正直でいるんだ。そうすれば、誰もそのことについて陰口を叩けないから」と訴えかけた。
以下キャンペーン動画。出演者は全員HIVポジティブ。
GMFAの暫定CEOであるイアン・ハウリーはキャンペーンを開始した理由について「HIV当事者に対する根深いスティグマ」を挙げている。
「2016年にもなって、当事者がHIVであることを恐れたり恥じたりするべきではないんだ。これまでに我々や他の団体は、HIVに対するスティグマを取り除くことに努めてきたけれど、取り除くことができたスティグマは、氷山の一角だよ」とイアンはスティグマの根深さについて語る。
「我々の最近の調査において、90%のHIV当事者が「HIVのスティグマは自身のHIVステータスを友人や家族、性行為のパートナーなどに伝えることを思いとどまらせると考えている」ことがわかったんだ。そして75%のHIV当事者は実際に、「HIVのスティグマを理由に自身のHIVステータスを他者に伝えたがらない」ことが明らかになっているよ」
「HIVのスティグマを完全に取り除くためには、ゲイコミュニティを始めとするコミュニティのHIVへの態度を改善することが必要不可欠だ。HIVのスティグマは、HIV当事者だけでなく、スティグマを恐れてHIV検査を避けている人へも悪影響を及ぼしているんだよ。このような姿勢は、感染の発見を遅らせてしまうことになりかねないから、非常に危険なんだ。感染の発見が遅いと、効果のある治療を受けられる可能性が低くなる上に、他の人にHIVを感染させてしまう可能性が高まってしまうから」
HIVのスティグマを取り除くことは、HIVのステータスに関わらず、みんなで取り組んでいくべき課題なのかもしれない。