LGBTを題材にした作品で史上初めて、アカデミー賞の最高峰「作品賞」を受賞した『ムーンライト』。
そんな『ムーンライト』だが、実はあの名作ゲイ映画『ブエノスアイレス』のオマージュ作品ということが分かった。
1997年公開の『ブエノスアイレス』は、香港映画界の鬼才、ウォン・カーウァイが男同士の切ない愛を描いた恋愛ドラマ。主演は当時絶頂のトニー・ レオンとレスリー・チャンがゲイカップルを演じ、大きな話題を呼んだ作品。
『ムーンライト』の中には、20年前のあの名作が生きていた
『ムーンライト』で、30代になったシャロンがケヴィンに再会するために車で旅立つ時に流れる音楽は、カエターノ・ヴェローゾが歌う「ククルクク・パロマ」。これは『ブエノスアイレス』のオープニングで印象的に使用された楽曲だ。
歌の内容は、亡くなった恋人を想い嘆き悲しみ、死んで一羽の鳩に生まれ変わってなお恋人の帰りを待つ男の寓話を歌ったもの。
映画好きになった時に「ジャン=リュック・ゴダールやウォン・カーウァイの映画を観ていた」というバリー・ジェンキンス監督は、インタビューで 「この選曲はあえて意図したものだ。同じ曲が『ブエノスアイレス』でかかっていて、これは直接的なオマージュなんだ。ブラックの車がハイウェイを走るシーンの撮影の仕方まで、『ブエノスアイレス』と同じにしているんだ」
「『ブエノスアイレス』 を初めて観た時のことは鮮明に覚えている。僕にとって、初めて観るゲイテーマの作品だった。『ブエノスアイレス』は僕にたくさんのことを与えてくれた」と思いを語っている。
また楽曲以外にも、シャロンとケヴィンが対面するシーン、シャロンの夢に現れるケヴィンのシーンなど、『ブエノスアイレス』と同じ構図で撮られているという指摘も多くあり、『ムーンライト』が20年前のゲイ映画の名作に強いリスペクトをしていることが発見できる。
『ブエノスアイレス』といえば、名作ゲイ映画として殿堂入りしている作品。
これまでジェンクシーで紹介してきた数々のランキング記事にも、必ずと言っていいほど上位にランクインしている。
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『ブエノスアイレス』から20年の時を経て、『ムーンライト』がLGBT作品としては史上初の「作品賞」を受賞したことに、大きな時代の変化を感じずにはいられない。
『ムーンライト』は、TOHOシネマズシャンテ他全国劇場にて絶賛公開中。
まだ本作を観ていない人は是非チェックするべし。