台湾の書籍販売サイト「博客來」にて、発売日当日売上No.1+2023年台湾漫画作品の売上TOP3に!
台湾のイラストレーター・GAYDIO(ゲイジオ)さんの記念すべき第1作『老師!男友還給我(Teacher, Give Me Back My Boy!)』は、発売と同時に現地で話題を集める注目の1冊となりました。
ゲイ3人の三角関係を描くドキドキのストーリー。
誕生秘話や出版後の反響について、作者のGAYDIOさんにお話を伺いました。
インタビュー後編はこちら> から。
「初めてBL漫画を読んだ時、主人公たちの感情が、自分の気持ちと似ていることに気づいたんです。」
自身のセクシュアリティへの気づきにも、漫画が大きな影響を与えたと語るGAYDIOさん。どのような経緯で『老師!男友還給我』を生み出すに至ったのでしょうか?
「イラストレーターとしての活動は、X(Twitter)や Instagram などのSNSから始まりました。最初の頃は、1枚絵をメインに投稿していて、後に『老師!男友還給我』の主人公となる金髪男子・潘家久と、幼馴染の眼鏡男子・戴言靖の2人は、そのうちの1枚に登場していた高校生でした。 ”この2人を軸に作品を作りませんか?” と、編集者さんからお話をいただいたのが、出版を目指しての作品づくりを始めたきっかけです。」
「BL漫画をたくさん読んできた中で、気持ちの共鳴を感じる一方、 ”なぜ主人公はノンケばかりなのだろう?” という疑問を常々感じていました。ゲイのイラストレーターとして、自分で描く作品には日常でのリアルな経験や悩みを込めたい。『老師!男友還給我』の登場人物たちには、そんな想いも反映しています。」
『老師!男友還給我』には、潘家久と戴言靖の2人に加えてもう1人、阿治老師という人物も登場します。作品誕生のきっかけとなった1枚絵には描かれていなかった彼が加えられた背景にも、GAYDIOさんが日頃から抱いていた疑問が反映されています。
「表紙を見れば、誰と誰が結ばれるのか一目瞭然。これまでに読んできたBL漫画は、そんな作品が多かった印象でした。だからこそ ”三角関係の不確かさと緊張感をBL漫画に持ってきたらどうなるかな?”と、挑戦してみたくて。最後までどの2人が結ばれるのか分からない、そんなストーリーを描きたいと思いました。3人の出番が平等になるように、脚本もしっかりと練った上で製作しています。」
セクシュアリティへの気づきをもたらしてくれたのも、BL漫画。幼い頃から漫画やアニメが好きだったと言うGAYDIOさんが、後に「絵を描く」道を選ぶ原動力にもなったそうです。
「でも実は、大学時代でもまだ具体的な行動は起こせていませんでした。台湾にもSNS上で有名なイラストレーターの方々がたくさんおられて、その投稿を日常的に眺める中で、SNS上で絵を発表していくのもアリかなと、漠然と考えていたくらいですね。」
「きっかけは、兵役でした。替代役(=公的機関や学校などに配属され、業務サポートをする兵役)だったのですが、その時に ”この替代役が終わって就職したら、絵を描く時間なんてなくなるんだろうな…” と、急に焦りが湧いてきて。」
「幸い、替代役では毎日配分された業務を完成させた後の時間は自由に生かすことができたので、 ”今こそSNSアカウントを作る時だ!” と思い立ち、イラストレーターとしての活動を始めました。少しずつ投稿していた単発の絵に好評をいただき、 ”自分にもできるかも!” という自信につながっていきました。定期的に投稿することを自分に課して、頑張り始めたのもこの頃です。 ”自分にしか作れない作品はきっとある!” と、気持ちを奮い立たせながら創作に専念しました。」
GAYDIOさんが描くイラストの特徴は、カラフルな色づかいと、かわいくてセクシーなキャラクターたち。現在のユニークなスタイルは、どのようなところから影響を受けてきたのでしょうか?
「ディズニーやピクサーの絵柄が素敵だなと、昔から感じていました。後は、BL漫画だけでなく日本の少女漫画も大好きで、よく読んだり観たりしていたので、そこからの影響もあるかもしれません。キャラクターの顔やフォルムは日本のアニメに近いけれど、色の塗り方や光の表現は欧米の手法に近いかも。特に光の表現にはこだわっていて、僕のスタイルを形作る大切な要素だと思っています。」
GAYDIOさんにとって初めての挑戦となる、書籍の出版。ビジュアルがメインの作品である『老師!男友還給我』の創作中には、様々なご苦労もあったと語ります。
「 『老師!男友還給我』の創作が始まる前は、1枚絵ばかり描いていたので、漫画を描く経験は全くありませんでした。実際に手を動かしながら、徐々に漫画を描く感覚を掴んでいきました。背景を描き込んだり、ストーリーの流れや構成を考えたり。セリフがない前提で、セクシュアリティの悩みというテーマを描くことにも、いろいろ試行錯誤しました。」
「自分の成長を実感できたのは、本になった仕上がりを眺めた時になってようやく、という感じです。 ”今の自分だったらどう描くかな?” というアイデアも、最近はよく湧いて来るのですが、そんな瞬間に自分の成長を感じますね。自分ができることだけに集中したおかげで、描くことの楽しさもようやく分かってきた気がしています。」
重版がかかるほどの好評を博している『老師!男友還給我』。
GAYDIOさんの周囲からも、様々な反響が寄せられているそうです。
「 ”ストーリーが面白い!” との感想をよくいただくのですが、制作時に特にこだわった部分だったので、とてもうれしく、そしてありがたく感じています。ゲイの読者の方々からも ”すごく共感できる!” との感想を、たくさんいただきました。」
「いただいた中で印象に残っているのは、 ”家にいる退屈な時間が、この漫画のおかげで楽しくなりました!” という感想ですね。『老師!男友還給我』の内容の一部はSNSでも連載していて、連載を始めたのが、ちょうどコロナの頃。自由に外出や旅行ができなくなったあの厳しい時期に、誰かの心にのこる作品を作れたことは、本当に光栄に思っています。」
「実は、今回の出版をきっかけに、家族にもカミングアウトしました!家族は、僕がずっと絵を描いていることは知っていましたが、描いている内容については知らなかったはず。でも本当は、僕のインスタをずっとフォローしてくれていたようで、 ”絵がきれいだね!フォロワー数も多くてすごい!誇りに思っているよ!” と、母親から言われた時は、すごくうれしかったです。本を出版したからこそ起こった、大きな変化の1つですね。」
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話題作『老師!男友還給我』の作者である、台湾のイラストレーター・GAYDIOさんに、お話を伺いました。
『老師!男友還給我』は、台湾の書籍販売サイト「博客來」での日本からの購入、または「Google Play」での電子書籍購入も可能となっています。
中国語が分からなくてもストーリーを理解できる構成も秀逸。ゲイ3人のドキドキな三角関係をのぞいてみたい方はぜひ、お手に取ってみてはいかがでしょうか?